遺言の内容は自由に決められる!

-海外資産やペットはどうすれば良いか?-

今回は、①遺言の内容は法定遺言事項である限り自由に決めることができること、②ペットのお世話については遺言や死後事務委任契約で決めることができることをお話します。

遺言の内容は自由に決めることができる

遺言作成者は、誰に、どの財産を、どのような割合で、どのようにして遺すかを自由に決めることができます。(ただし、公序良俗に反する内容は無効となり得ます。)
したがって、たとえば、以下のような遺言を作成することもできます。
・全部または一部の財産を特定の家族に遺す
・全部または一部の財産を家族以外の人に遺す
・全部または一部の財産を特定の法人(大学、病院等)に遺す(寄付)
・相続手続のなかで、不動産を売却(換価)し、現金として特定の者に遺す など

海外資産がある場合

不動産など海外資産についても日本の遺言で、誰に、どのようにして遺すかということを決めることができます。
ただし、実際にその遺言が執行されるのは海外資産が所在する外国になるので、日本語で作成された日本式の遺言を海外の役所や金融窓口などに持って行っても、遺言の内容などについて理解してもらえず、取り合ってもらえないという事態が予想されます(翻訳を付しても、それが本当に遺言であるのか否か疑われることもあり得ます。)。
そのため、日本で作成した遺言書とは別途、当該海外資産の取り扱いに関する(部分的な)遺言の作成を当該外国の弁護士に依頼して、当該外国に円滑に執行できるようにしておくべきといえるでしょう。

遺言でペットの世話・飼育

(1) 私も18歳半と大往生をしてくれたワンコを飼っていたので、本人が亡くなった後のペットについてご心配される気持ちは良く分かります。特に、親戚など法定相続人がいらっしゃらない方は大変ご心配されるのではないでしょうか?
ペットのお世話をお願いする主な方法としては、①遺言を利用する方法、②死後事務委任契約を利用する方法がある。なお、信託を利用する方法もありますが、内容が複雑になる場合があること、遺言又は死後事務委任契約の利用で通常は対応できることから、本コラムでは割愛します。

(2) 遺言を利用する方法
ペットの世話を第三者にお願いするということは、法的には(少し抵抗のある表現になりますが)ペットという動産の所有権を贈与するということになります。ただし、「世話をお願いする」という負担も併せてお願いするという意味で「負担付遺贈」と呼ばれる形態をとることになります。
そのため、遺言には負担付遺贈という形でペットの世話をお願いする旨を記載することができます。具体的には、以下の記載が考えられます。なお、実際には、受遺者に対してペットの世話に要する費用相当額等も併せて遺贈することも考えられます。
【記載例】
遺言者は、愛犬●●の所有権を、山田太郎(平成…生。住所…。)に遺贈する。ただし、当該遺贈の負担として、山田太郎は、●●の飼育事務を生涯にわたり誠実に行うものとする。
もっとも、負担付遺贈は贈与を受ける側(受遺者)からすると負担を引き受けることを伴いますので、遺贈者の一方的な意思のみで当然にペットの世話をお願いできるわけではありません。つまり、受遺者が、受遺者がペットの世話をしないと判断した場合(遺贈を放棄した場合)には、受遺者はペットの世話を行う義務を負わないことになることに注意が必要です。したがって、遺言作成時、遺言作成者は受遺者と十分な協議を行うことが重要になります。

(3) 死後事務委任契約を利用する方法
死後事務委任契約とは、第三者に対して、死後における被相続人の事務処理を行う代理人権を付与し、その事務処理を行ってもらう契約のことをいいます。
ペットの世話というのは事務処理という捉え方もできるため、生前に信頼できる第三者との間で死後事務委任契約を作成して、ペットの世話をお願いしておくことになります。
この場合も、委任者から受任者に対する報酬に関する規定を設けることが考えられます。
【記載例】
第1条 死後事務委任の内容
1 甲(委任者)は、本日、乙(受任者)に対して、甲の死後、甲の愛犬●●の飼育事務を委託し、乙はこれを受託した。
2 乙は、甲の死後、甲の愛犬●●を乙の自宅において、その生涯にわたり、誠意を持って飼育しなければならない。

第2条 費用
甲は、本日、前条の事務を行う際の費用として現金〇〇円を乙に預託し、乙はこれを受託した。

第3条 報酬
甲は、本日、本契約の報酬として、乙に対して現金〇〇万円を支払い、乙はこれを受領した。
なお、死後事務委任契約と遺言の違いについてはコラム【終活に向けて「いま」できること-老後・死後に備えた法的制度のご紹介-】の「死後事務委任契約」をご参照ください。

まとめ

以上のとおり、遺言の内容は法定遺言事項である限り自由に定めることができます。また、遺言を利用してペットのお世話をお願いすることもできますが、死後事務契約を利用して決めておくこともできます。いずれの方法を取る場合でも、事前にペットの世話をお願いする人又は団体との間で十分な協議をしておくことが重要になります。

Contact

お問い合わせ

Zoom等を利用したオンライン法律相談も対応可能です。

プライバシーポリシーおよび特定商取引法に基づく表記に準じる表記

お問い合わせを送信しました。