(1) 私も18歳半と大往生をしてくれたワンコを飼っていたので、本人が亡くなった後のペットについてご心配される気持ちは良く分かります。特に、親戚など法定相続人がいらっしゃらない方は大変ご心配されるのではないでしょうか?
ペットのお世話をお願いする主な方法としては、①遺言を利用する方法、②死後事務委任契約を利用する方法がある。なお、信託を利用する方法もありますが、内容が複雑になる場合があること、遺言又は死後事務委任契約の利用で通常は対応できることから、本コラムでは割愛します。
(2) 遺言を利用する方法
ペットの世話を第三者にお願いするということは、法的には(少し抵抗のある表現になりますが)ペットという動産の所有権を贈与するということになります。ただし、「世話をお願いする」という負担も併せてお願いするという意味で「負担付遺贈」と呼ばれる形態をとることになります。
そのため、遺言には負担付遺贈という形でペットの世話をお願いする旨を記載することができます。具体的には、以下の記載が考えられます。なお、実際には、受遺者に対してペットの世話に要する費用相当額等も併せて遺贈することも考えられます。
【記載例】
遺言者は、愛犬●●の所有権を、山田太郎(平成…生。住所…。)に遺贈する。ただし、当該遺贈の負担として、山田太郎は、●●の飼育事務を生涯にわたり誠実に行うものとする。
もっとも、負担付遺贈は贈与を受ける側(受遺者)からすると負担を引き受けることを伴いますので、遺贈者の一方的な意思のみで当然にペットの世話をお願いできるわけではありません。つまり、受遺者が、受遺者がペットの世話をしないと判断した場合(遺贈を放棄した場合)には、受遺者はペットの世話を行う義務を負わないことになることに注意が必要です。したがって、遺言作成時、遺言作成者は受遺者と十分な協議を行うことが重要になります。
(3) 死後事務委任契約を利用する方法
死後事務委任契約とは、第三者に対して、死後における被相続人の事務処理を行う代理人権を付与し、その事務処理を行ってもらう契約のことをいいます。
ペットの世話というのは事務処理という捉え方もできるため、生前に信頼できる第三者との間で死後事務委任契約を作成して、ペットの世話をお願いしておくことになります。
この場合も、委任者から受任者に対する報酬に関する規定を設けることが考えられます。
【記載例】
第1条 死後事務委任の内容
1 甲(委任者)は、本日、乙(受任者)に対して、甲の死後、甲の愛犬●●の飼育事務を委託し、乙はこれを受託した。
2 乙は、甲の死後、甲の愛犬●●を乙の自宅において、その生涯にわたり、誠意を持って飼育しなければならない。
第2条 費用
甲は、本日、前条の事務を行う際の費用として現金〇〇円を乙に預託し、乙はこれを受託した。
第3条 報酬
甲は、本日、本契約の報酬として、乙に対して現金〇〇万円を支払い、乙はこれを受領した。
なお、死後事務委任契約と遺言の違いについてはコラム【終活に向けて「いま」できること-老後・死後に備えた法的制度のご紹介-】の「死後事務委任契約」をご参照ください。