自筆証書遺言のサンプル

-有効な自筆証書遺言を作成するための条件(1)-

今回と次回のコラムでは自筆証書遺言の作成方法についてご紹介します。
なお、遺言を作成するにあたっては「遺言能力」(一般的には15歳程度の判断能力)も必要とされますが、遺言能力については別コラムでご説明します。

自筆証書遺言を作成する方法

民法上、遺言作成者が自書する方法で作成する遺言は「自筆証書遺言」として認められます。
民法は、以下のように、自筆証書遺言の作成方法について定めています。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
条文だけを見ても、実際、どのように作成すれば良いのか分かりにくいと思いますので、簡単なサンプルから見ていきたいと思います。
上記サンプルのうち「遺言書」というタイトルが付いてる左側部分を「本文部分」と呼び、右側部分の別紙を「財産目録」と呼びます。
このように、典型的な自筆証書遺言は、本文部分でどの財産を誰に相続させるかということを記載し、別紙でその財産を列挙するという構成をとります。 重要なことは、この本文部分は自書する必要があるということです。
他方で、財産目録については自書の必要はなく、パソコンで打ち込んで作成することもできます。また、財産目録には、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳などを添付して、財産を特定することもできます。ただし、自書によらないで財産目録を作成した場合には財産目録の全てページに遺言者の署名押印が必要となります。
なお、各ページ間の契印は必要ではないものの、トラブル防止の観点からは契印をするのが無難であるといえるでしょう。

自筆証書遺言は封筒に入れる必要があるのか?

自筆証書遺言は封筒に入れて、封印しなくても作成することができます。
しかし、自筆証書遺言をそのまま保管した場合には、知らないうちに第三者によって書き換えられてしまうという危険性があります。そのため、自筆証書遺言は封筒に入れて、封印したうえで、保管するべきでしょう。
な、詳細は別コラムでご紹介しますが、自筆証書遺言を作成した場合には家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いのもとで、「検認」と呼ばれる手続を経なければならないのですが、自筆証書遺言を封筒にいれて作成した場合には、裁判官の面前で他の相続人が揃った状態で開封する必要があり、それ以前に勝手に開封してはいけません。
このような手続が存在することも考慮して、封筒には以下のような記載をするのが無難といえるでしょう。

まとめ

以上のように、一見、自筆証書遺言の作成は簡単であるようにみえます。しかし、次回のコラムでご説明するように、自筆証書遺言を作成するうえでは細かなルールがあり、これらのルールを遵守しないと作成した遺言が無効となってしまいます。
また、自筆証書遺言を作成することには危険性(リスク)もあります。
これらの危険性を回避するためにも、公正証書遺言の作成をお勧めする場面がありますが、個別の事情に応じたアドバイスをさせていただければと思います。

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